5話 任務の終わり

「うああああああ!!」

血迷ったかのように、機械兵に突撃するデルタ。ものも言わず、ガトリングを構えて粒子拡散装置を駆動させる機械兵。

刹那ーーーー機械兵のガトリングが、切り裂かれていた。

明らかに困惑する機械兵。そのうちの1機の胴体を、なにかの刃が貫いた。機械兵が振り返る。

その先に、2本のダガーを構えたデルタが立っていた。

得意気な顔で、機械兵の方を向いている。

「ふふっ、おどろいた?

君たちがつけてるその装置は、粒子兵装の粒子を分散する装置…つまり、バリアじゃない。

だから、鉄で…実体でできたボクのダガーも通ったわけさ。…もっとも、粒子で切れ味を高めていたから、いつもよりは

切れ味落ちたけどね。それと、もうひとつ……」

こんどは、無効化されるはずのパーティクルセイバーに持ち替えた。その刀身は、いつもより深く、濃い青にそまっている。

瞬間、機械兵の体を粒子が駆け抜け、上下に両断した。

「分散するっていっても、その量には限界がある。だから、その質量を超える粒子で刀身を形成すれば、粒子攻撃でも通るわけさ」

説明が終わると同時に、両断された機械兵は爆散した。

「さて、早く依頼品をーーー」

その声を遮るかのような、大音量の咆哮。

「うわあああ!……なんだ?!」

続く爆音、振動。デルタもバランスを崩し

「ぶへ!」

派手にすっころんだ。


内壁は無残に引き裂かれ、床には吹き飛んだ機械兵の残骸。

一言でこの部屋の情景を例えるなら、地獄。

むしろ、それ以外に部屋内の状況を伝えられる言葉がないくらいだった。

そんな部屋の中央に、仁王立ちする獣のシルエット。

グルルルル、と威嚇するかのように唸り声をあげ、鋭い牙をむく。

吹っ飛んだ入口から、また複数体の機械兵がはいりこんでくる。

「グウウウ………ゴオアアアアアアあああ!!!!」

今一度、咆哮があがった。




暗がりの中、その男は机に足を乗せて座っていた。

その前に、音も無く何者かが着地する。

「ミュー様……ご報告があります」

「なんだ」

「…グレイヴ・パスキューリングを、何者かに強奪されてしまいました」

その報告に何を言うでもなく、男、ミューは椅子に背を預ける。

「被害状況は」

「はっ。…残念ながら、あの場に駐屯していた大多数が駆逐されました。遺憾ではありますが、あそこは破棄したほうが、よろしいかと」

「そうか。……なら破棄だ。とっととしろ」

「は、はい!失礼いたしますっ」

いそいで謝罪し、だばだばと消えていった。

その場に一人残った男が、口元に薄ら笑いを浮かべた。

「…よくやったとほめてやるよ、命知らずども。…………けどな」

それ以上は男が口を閉ざしてしまい、言葉は続かなかった。



  • 最終更新:2017-09-10 03:31:50

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